DILL [ディル]

科名:セリ科イノンド属
和名:イノンド
香りの種類:トップ~ミドルノート
香りのイメージ:微かな酸味を感じスパイシーで爽やかな香り
香りの効能:鎮静作用・抗けいれん作用
食用ハーブの効能:消化促進作用・血液浄化作用・整腸作用
ディルは、北欧の家庭料理でよく使われているハーブです。
南ヨーロッパや西アジアが原産地ですが、いまは世界各地で栽培されています。ディルは、セリ科のイノンド属に唯一分類される一年草です。成長すると約60~150cmになり、細い茎に枝分かれした糸状の細い葉が特徴です。夏に咲く白または黄色の小さな傘の形をした花は、かすかにミントの香りがします。
ディルの名前は、古代スカンジナビア語で「鎮める」という意味の言葉が由来とされています。江戸時代中期に生薬として日本に伝わってきたディルは、和名をイノンドといいます。イノンドの語源は、スペイン語の「イネルド」「エネルド」またはポルトガル語の「エンドロ」が変化したものと考えられています。
紀元前4000年の古代エジプトに存在していたディルは、消化促進の薬草として医師に利用されていた記録もあります。中世ヨーロッパでは、鎮静剤や魔除けの薬草として使用されていた歴史もあるのです。
ヨーロッパには、夜泣きする赤ちゃんに煎じたディルを少量与えると抗けいれん作用の効果で泣き止むという民間療法が伝えられています。中国でも8世紀頃にはディルが存在していた記録があり、日本には蒔蘿(ジラ)という名の漢方として伝えられました。
ディルは、葉・花・茎・種子のすべてがハーブになります。葉でつくられるハーブは「魚のハーブ」と呼ばれ魚の臭みを消す効果もあり、とくにサーモンと相性がよく、一緒に使われることが多いです。魚の臭みを消すだけではなく、消化促進作用や整腸作用があるハーブとしても利用されています。
ディルの葉と種子とでは、香り成分が違います。種子にはカルボンやリモネンなどが含まれているため刺激的な香りと辛味があり、葉にはα-フェランドレンという主成分が含まれ爽やかさが強いです。
カルボンやリモネンには、鎮静作用・消化促進作用・血液浄化作用の効能があります。そのため肉や魚料理に使用すると胃もたれや動脈硬化を防ぐ効果が期待できます。
ディルは種子や葉から精油も作られ、種子から抽出したものをディルシード、葉から抽出したものをディルウィードと呼び、一般的な精油はディルシードの方です。ディルの香りには、鎮静作用があるため気持ちを落ち着かせたいときには、ハーブティーや精油を利用した芳香浴を行うとリラックスできるでしょう。
ディルのハーブや精油は通常の使用をしていれば安心して使えますが、セリ科の植物にアレルギーがある場合には注意が必要です。また種子の香り成分は刺激が強いため、妊娠中・授乳中・幼児は避けるといいでしょう。